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『ユマニチュード』の翻訳出版に向けて

12 31, 2014

(だいぶ前の投稿です)

 (2014年9月8日追記)
 『Humanitude(ユマニチュード)「老いと介護の画期的な書」』が完成しました!!こちらで販売しています。
 紀伊國屋などの書店、Amazonでも扱いがありますが、トライアリストのホームページから注文していただくと、ちょっとだけお得です。


Humanitude(ユマニチュード)「老いと介護の画期的な書」Humanitude(ユマニチュード)「老いと介護の画期的な書」
(2014/09)
イヴ ジネスト、ロゼット マレスコッティ 他

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 トライアリストでは『ユマニチュード』の翻訳出版に向けて作業を進めています。

 「ユマニチュード」という概念については、著者のホームページに説明があるのでぜひ読んでみてください。

 この本はいわゆる介護の本にあたるものですが、その射程範囲の広さに驚かされます。

 人がこの世に生まれ、成長し、老いていくということが哲学的、社会学的、科学的にどういう過程であるのかが検討され、そのなかで「ユマニチュード」の定義が明らかにされていきます。
 このように長期的な視点に立つことによって、「老い」の問題がなにも高齢者に限った問題ではないということがわかります。人にはみな老いる時期がやってくるのです。むしろ、子どもであれ大人であれ老いゆく過程にあると言ってもいいかもしれません。

 また、この本で繰り返し強調されているのが、介護する人も介護される人もひとりの人間であるということです。それも、「人間」という一般的存在ではなく、それぞれが異なる特異な存在であるということ。
 いかに両者が「モノ」として扱われてきたか。介護の歴史を通して語られるその事実に胸が痛くなりました。

 介護の実践的な側面にも触れられています。「まなざし」、「ことば」、「触れる行為」の3つが人間にとっていかに重要か、それを介護の現場にどのように適用するのか。ほかにも、認知症の人とどう触れ合えばいいのか、入浴法はどのようなものがいいのかなどなど。

 もちろんここで何もかもお話しすることはできません。その全容は翻訳書の出版を楽しみにしていてくださいね。
 
 『ユマニチュード』は人の尊厳を高らかに謳いあげる本。著者のジネストさんたちの愛に溢れた介護哲学の本、介護実践の本です。
 介護の仕事をしている人、介護のプロを目指している人、家族の介護をしている人、これから介護をすることになる人、これから介護をされる側になる人、みなさんに読んでいただきたいです。きっと心が温かくなりますよ。
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山岡洋一『英単語のあぶない常識―翻訳名人は訳語をこう決める』

12 19, 2014

英単語のあぶない常識 ――翻訳名人は訳語をこう決める (ちくま新書)英単語のあぶない常識 ――翻訳名人は訳語をこう決める (ちくま新書)
(2014/09/26)
山岡洋一

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 翻訳者のバイブル『翻訳とは何か―職業としての翻訳』の山岡洋一さんが書いたもうひとつの本です。最近kindle化されていましたので紹介します。

 □原文にdefineがあれば何も考えずに「定義する」と訳す。
 □原文にexpectがあれば何も考えずに「期待する」と訳す。
 □原文にincludeがあれば何も考えずに「含む」と訳す。
 □原文にin factがあれば何も考えずに「実際」と訳す。
 □原文にtraditionalがあれば何も考えずに「伝統的」と訳す。

 ひとつでも当てはまったら要注意です。

 この本の核心は「情報量」。情報量理論では「情報量が大きい」とか「情報量が小さい」という言い方をします。ある単語なり語句なりについて、それが示す対象に不確かさやあいまいなところがなく、対象が絞り込まれている場合を「情報量が大きい」と言い、それとは逆にそれが指す対象が不確か、あいまいで対象を絞り込むことができていない場合を「情報量が小さい」と言います。

 たとえばosteoporosisという単語は情報量が大きい。osteoporosisが指す対象はひとつに絞り込まれていて、日本語で言えば「骨粗鬆症」です。それ以上でもそれ以下でもありません。

 それに比べてcomponentという単語は情報量が小さい。辞書を引くと、「構成要素」や「部分」などの訳語が載っていますが、よくわかりません。これだけでは何のことを言っているのかわからず、周りにある単語をみてはじめて、componentがその文章で何を指しているのかがわかってきます。

 山岡さんは「情報量」ということばこそ使っていませんが、この本にみられる思考法は「情報量」の考え方そのものです。「はじめに」にはこうあります。
 

引用
この本では、expectのように、だれでも知っている英語の単語や成句をとりあげて、常識になっている訳語との間にどのような意味のずれや違いがあるかを、用例によって考えていく。
訳語を知っていても、英語の語句の「意味」はわからない。意味を理解するには、用例をいくつもみていくのが、遠回りのようで、じつは近道である。そして、外国語を理解するときは母語で考えるものだし、これがだれにとってももっとも効率的なのだから、英語の語句の「意味」をつかむには、常識になっている訳語との間に、どのような類似と違いがあるかを考えていくのが最善の方法である。


 この「英語の語句」と「常識になっている訳語」との「類似や違い」をひとことで言うと「情報量の差」になります。

 defineと「定義する」、expectと「期待する」、includeと「含む」、in factと「実際」、traditionalと「伝統的」はいずれも情報量に差があります。さらに言えばどの場合も訳語の方が情報量が大きくなっています。

 たとえば、defineは「定義する」よりも情報量が小さく、「定義する」よりも広い範囲の対象に使うことができます。同じdefineを使ってA good dictionary defines words concisely. 、Please define your position. と言うことはできても、「定義する」の場合は「単語を簡潔に定義する」とは言えても、「立場を定義してください」とは言えないわけです。

 このように「情報量」を考えて訳語を決める作業というのは確かに難しいです。トライアリストでもランクが上になるほど、医薬の文体も身について、情報子の理解にも問題がないのに、この思考法がまだまだ徹底できていなくて壁を越えられない人が多いという印象を受けます。そのような方にぜひ読んでいただきたい一冊です。


翻訳とは何か―職業としての翻訳翻訳とは何か―職業としての翻訳
(2001/08)
山岡 洋一

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ニオケルーシス病

12 16, 2014

 
こうすれば医学情報が伝わる!! わかりやすい文章の書き方ガイド (ライフサイエンス選書)こうすれば医学情報が伝わる!! わかりやすい文章の書き方ガイド (ライフサイエンス選書)
(2014/10/08)
林 健一

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 最近出た『こうすれば医学情報が伝わる!!わかりやすい文章の書き方ガイド』という本に、こんな話が出てきます。以下引用です。

引用 
医療機関や製薬企業で働いていると、上司や先輩の影響を受けて、いつの間にか「〜において」や「〜における」を頻繁に使うようになります。(中略)「〜において」や「〜における」を使うのは深刻な感染症なのです。(中略)平盛勝彦先生は、『白衣を脱いだらみな奇人』(日本評論社)という著書のなかでこの感染症に名前をつけました。先生のつけた病名は「ニオケルーシス病」というもので…(中略)病気であれば、治療しなければいけません。



 トライアリストではこれを「おけるウイルス」と呼んでいます。同じ発想ですね。

 やっぱり、お医者さんや製薬企業で働く人のなかにも、日本語と真剣に向き合っている人はいるのです。医学雑誌を読んでいてもほとんどの論文が日本語になっていませんが、たまに一点の曇りもない整然とした日本語で書かれた論文を目にします。本当に同じ日本語で書かれているのかわからなくなるくらい大きな差があります。

 中井久夫さんも精神科医ですが、ヴァレリーの翻訳もあれば、日本語に関する著書も出しています。いったいこの差はどこからくるのでしょうか。とても興味があります。


私の日本語雑記私の日本語雑記
(2010/05/29)
中井 久夫

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 読書量でしょうか。でも、質の悪い日本語で書かれた本を大量に読めば、それだけ悪い影響を受けることになります。お医者さんは論文をたくさん読んでいるはずですから、そのなかから平盛勝彦さんのような人が出てくる説明がつきません。

 僕は「美意識」かなと思います。といっても「きれいな日本語」とか「美しい日本語」というように個々人の感覚に左右されるものではなくて、いかに無駄がなく、整然としていて、読者がスッと入っていけるような日本語を書くかというもの。それを突き詰めた結果、小説を書いたり、翻訳をしたりという人が出てくるのではと踏んでいます。

 何か病気になって手術が必要になりました。命にかかわります。担当医をふたりから選べます。手術の成功率は同じだけれども、一方はまともな日本語が書け、もう一方はわけのわからない日本語しか書けません。どっちを選びますか。私は絶対に前者。後者の方が多少成功率が上だったとしても前者を選ぶかもしれません。「美意識」のない人、自分なりの価値判断の基準のない人に命を預けるのはやっぱり怖いです。




白衣を脱いだらみな奇人―あるドクターの本音と本当白衣を脱いだらみな奇人―あるドクターの本音と本当
(2005/06)
平盛 勝彦

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翻訳の森に迷い込んでもう3年。トライアリスト東京。

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