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『誤訳迷訳欠陥翻訳』

08 06, 2013
誤訳迷訳欠陥翻訳 (1981年)誤訳迷訳欠陥翻訳 (1981年)
(1981/06)
別宮 貞徳

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 読む場所を選ぶ本。まわりに人がいるところで読んではいけません。あまりにもおかしくて笑いをこらえきれなくなり、変な人に思われます。
 ただ、読後は落ち込んだ気分に。こんな低劣な翻訳書が出版されて、それがまかり通ってしまう世界ってなんだかな~って感じです
 現在このような状況が改善されているのかどうかは調べてみないことにはわかりません。

 そういえばこの前、まるまる1章機械翻訳で訳されたも本がそのまま出版されたというとんでもない話がありましたね。それで許されるなら楽な商売ですね


 さて、別宮さんはこの本で、誤訳を考えるうえで有益なことを書いています。翻訳にはどのようなレベルのものがあるかというものです。p.232以降の内容を簡単に引用、整理してみます。

 ①良訳 著者の言わんとするところを正しくとらえて、それをりっぱな日本語で表現したもの
 ②名訳 良訳の中でも特にすぐれたもの
 ③(広い意味での)悪訳 良訳の2つの条件をみたさないもの
 ④(狭い意味での)悪訳 りっぱな日本語で表現されていないもの
 ⑤(広い意味での)誤訳 著者の言わんとするところを正しくとらえていないもの
 ⑥(狭い意味での)誤訳 語学レベルでの誤り(表層的)がなくても、感覚的なレベルでの誤り(深層的)があるもの

 要は解釈と日本語というふたつの基準を設けて考えているわけです。

 日本語については「りっぱな日本語」という表現を使っているのですが、この本を読んだだけではこれが「上手な日本語」の意味なのか、「日本語としての体裁を整えたもの」の意味なのか、いまひとつよくわかりません。
 
 ただ、この本のなかで「いわゆる誤訳よりも悪訳の方がよほど罪が重いと考えている」(p.30)とか、「誤訳なんてハシカみたいなものだが悪訳はガンだ」(p.31)などの記述があることを踏まえれば後者の可能性が高いと思います。

 そうであるとすれば、これは「悪訳」なんてものではいささかもなく、「非訳」とでも言うべきものだと思います。日本語の文章になっていなければ、翻訳がどうのこうの言ったって意味がありません。

 詳しくは『日本人に日本語を』を読んでいただけばいいのですが、日本語の「免疫力」、日本語の「健康」に問題のある文章は、そもそも日本語としての体裁を整えていないわけですから、翻訳の評価の対象にはなりえません。それ以前の問題です。

 
日本人に日本語を〈第1部〉翻訳者に日本語を日本人に日本語を〈第1部〉翻訳者に日本語を
(2011/04)
辻谷 真一郎

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 解釈の問題にも触れておきます。別宮さんは解釈を表層的解釈と深層的解釈に分けています。そして、「表層的には誤訳でも深層的には誤訳でない場合、逆に表層的には誤訳ではなくても――つまり正訳でも――深層的には誤訳のことが往々にしてある。そして、それこそほんとうの誤訳と呼ばれるべきだ」(p.232)と言っています。

 前者についてはドナルドキーン氏が『斜陽』の英訳で「白たび」をwhite glovesにしたという話を紹介しています。「白たびは威儀を正した礼装」ですが、「white socksと訳したら、まるでテニスに出かけるスポーティな少女のおもむき」が出てしまいます。そこでwhite glovesなら白たびと同じく、「威儀を正した礼装」のイメージがわくので、「表層的には誤訳でも深層的には誤訳でない」というわけです。

 まさにその通りなのですが、表層的に誤訳だとか誤訳でないとか言うのは意味のないことだと思います。X語の単語なり文なりを読んだり聞いたりして思い描くイメージと、Y語の単語なり文なりを読んだり聞いたりして思い描くイメージが同じになるように、言語の形式を変換するのが翻訳と言う作業です。言語が違えば言語の形式も違います。だからその形式の違いを問題にしても無意味だということです。


 以上のことを踏まえて翻訳を評価する基準を考えてみました。少し表現を変えています。

 ①良訳 原文の情報を正確に把握できており、それを変質させずに「基礎体力」、「競技能力」を備えた日本語で表現しているもの
 ②名訳 良訳のなかでも、日本語の「競技能力」が一線級のもの
 ③悪訳 日本語の「基礎体力」、「競技能力」に難があるもの
 ④誤訳 原文の情報を正確に把握できていないか、それを正確に把握できていても形式を変換する際に変質させてしまったもの
 ⑤非訳 日本語の「免疫」、「健康」に問題があり、日本語としての体裁を整えていないもの
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翻訳の森に迷い込んでもう3年。トライアリスト東京。

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