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山岡洋一『英単語のあぶない常識―翻訳名人は訳語をこう決める』

12 19, 2014

英単語のあぶない常識 ――翻訳名人は訳語をこう決める (ちくま新書)英単語のあぶない常識 ――翻訳名人は訳語をこう決める (ちくま新書)
(2014/09/26)
山岡洋一

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 翻訳者のバイブル『翻訳とは何か―職業としての翻訳』の山岡洋一さんが書いたもうひとつの本です。最近kindle化されていましたので紹介します。

 □原文にdefineがあれば何も考えずに「定義する」と訳す。
 □原文にexpectがあれば何も考えずに「期待する」と訳す。
 □原文にincludeがあれば何も考えずに「含む」と訳す。
 □原文にin factがあれば何も考えずに「実際」と訳す。
 □原文にtraditionalがあれば何も考えずに「伝統的」と訳す。

 ひとつでも当てはまったら要注意です。

 この本の核心は「情報量」。情報量理論では「情報量が大きい」とか「情報量が小さい」という言い方をします。ある単語なり語句なりについて、それが示す対象に不確かさやあいまいなところがなく、対象が絞り込まれている場合を「情報量が大きい」と言い、それとは逆にそれが指す対象が不確か、あいまいで対象を絞り込むことができていない場合を「情報量が小さい」と言います。

 たとえばosteoporosisという単語は情報量が大きい。osteoporosisが指す対象はひとつに絞り込まれていて、日本語で言えば「骨粗鬆症」です。それ以上でもそれ以下でもありません。

 それに比べてcomponentという単語は情報量が小さい。辞書を引くと、「構成要素」や「部分」などの訳語が載っていますが、よくわかりません。これだけでは何のことを言っているのかわからず、周りにある単語をみてはじめて、componentがその文章で何を指しているのかがわかってきます。

 山岡さんは「情報量」ということばこそ使っていませんが、この本にみられる思考法は「情報量」の考え方そのものです。「はじめに」にはこうあります。
 

引用
この本では、expectのように、だれでも知っている英語の単語や成句をとりあげて、常識になっている訳語との間にどのような意味のずれや違いがあるかを、用例によって考えていく。
訳語を知っていても、英語の語句の「意味」はわからない。意味を理解するには、用例をいくつもみていくのが、遠回りのようで、じつは近道である。そして、外国語を理解するときは母語で考えるものだし、これがだれにとってももっとも効率的なのだから、英語の語句の「意味」をつかむには、常識になっている訳語との間に、どのような類似と違いがあるかを考えていくのが最善の方法である。


 この「英語の語句」と「常識になっている訳語」との「類似や違い」をひとことで言うと「情報量の差」になります。

 defineと「定義する」、expectと「期待する」、includeと「含む」、in factと「実際」、traditionalと「伝統的」はいずれも情報量に差があります。さらに言えばどの場合も訳語の方が情報量が大きくなっています。

 たとえば、defineは「定義する」よりも情報量が小さく、「定義する」よりも広い範囲の対象に使うことができます。同じdefineを使ってA good dictionary defines words concisely. 、Please define your position. と言うことはできても、「定義する」の場合は「単語を簡潔に定義する」とは言えても、「立場を定義してください」とは言えないわけです。

 このように「情報量」を考えて訳語を決める作業というのは確かに難しいです。トライアリストでもランクが上になるほど、医薬の文体も身について、情報子の理解にも問題がないのに、この思考法がまだまだ徹底できていなくて壁を越えられない人が多いという印象を受けます。そのような方にぜひ読んでいただきたい一冊です。


翻訳とは何か―職業としての翻訳翻訳とは何か―職業としての翻訳
(2001/08)
山岡 洋一

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ニオケルーシス病

12 16, 2014

 
こうすれば医学情報が伝わる!! わかりやすい文章の書き方ガイド (ライフサイエンス選書)こうすれば医学情報が伝わる!! わかりやすい文章の書き方ガイド (ライフサイエンス選書)
(2014/10/08)
林 健一

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 最近出た『こうすれば医学情報が伝わる!!わかりやすい文章の書き方ガイド』という本に、こんな話が出てきます。以下引用です。

引用 
医療機関や製薬企業で働いていると、上司や先輩の影響を受けて、いつの間にか「〜において」や「〜における」を頻繁に使うようになります。(中略)「〜において」や「〜における」を使うのは深刻な感染症なのです。(中略)平盛勝彦先生は、『白衣を脱いだらみな奇人』(日本評論社)という著書のなかでこの感染症に名前をつけました。先生のつけた病名は「ニオケルーシス病」というもので…(中略)病気であれば、治療しなければいけません。



 トライアリストではこれを「おけるウイルス」と呼んでいます。同じ発想ですね。

 やっぱり、お医者さんや製薬企業で働く人のなかにも、日本語と真剣に向き合っている人はいるのです。医学雑誌を読んでいてもほとんどの論文が日本語になっていませんが、たまに一点の曇りもない整然とした日本語で書かれた論文を目にします。本当に同じ日本語で書かれているのかわからなくなるくらい大きな差があります。

 中井久夫さんも精神科医ですが、ヴァレリーの翻訳もあれば、日本語に関する著書も出しています。いったいこの差はどこからくるのでしょうか。とても興味があります。


私の日本語雑記私の日本語雑記
(2010/05/29)
中井 久夫

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 読書量でしょうか。でも、質の悪い日本語で書かれた本を大量に読めば、それだけ悪い影響を受けることになります。お医者さんは論文をたくさん読んでいるはずですから、そのなかから平盛勝彦さんのような人が出てくる説明がつきません。

 僕は「美意識」かなと思います。といっても「きれいな日本語」とか「美しい日本語」というように個々人の感覚に左右されるものではなくて、いかに無駄がなく、整然としていて、読者がスッと入っていけるような日本語を書くかというもの。それを突き詰めた結果、小説を書いたり、翻訳をしたりという人が出てくるのではと踏んでいます。

 何か病気になって手術が必要になりました。命にかかわります。担当医をふたりから選べます。手術の成功率は同じだけれども、一方はまともな日本語が書け、もう一方はわけのわからない日本語しか書けません。どっちを選びますか。私は絶対に前者。後者の方が多少成功率が上だったとしても前者を選ぶかもしれません。「美意識」のない人、自分なりの価値判断の基準のない人に命を預けるのはやっぱり怖いです。




白衣を脱いだらみな奇人―あるドクターの本音と本当白衣を脱いだらみな奇人―あるドクターの本音と本当
(2005/06)
平盛 勝彦

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翻訳者の安全基準

06 07, 2014
 作業がいよいよ大詰めの段階に入っている「ユマニチュード」にこんなことが書かれています。


 あらゆる電気技師が遵守すべき安全規範が一部の者によってしか遵守されておらず、電気技師が仕事をしたあと、少なからず感電死の危険があることがわかったら、それをどう考えるだろうか。(中略)ある職業に属する者が一人残らずその規範を知り適用することは、その職業の人を頼る人たちが危険な目に遭わないための最低限の保障である。(原書p.200)

 われわれのひとりが電気技師を呼び、洗面台の上に電気のコンセントをつけてほしいと頼んだとしよう。その人はそれが危険なことで、技術規範に反し、それでは責任が持てないという理由で、依頼を断るであろう。(原書p.203)



 翻訳の世界ではもちろん、一律の基準を作ることは難しいかもしれません。ただ、ひとりひとりの翻訳者が自分なりの基準を作って、それを示すことならそんなに難しいことではないと思います。もしそれができていれば、日本語をむしばむ「ウイルス」がこんなに蔓延するような事態にはならなかったでしょう(念のため、日本人の知らない日本語とかそのような類の話とは別物です)。

 でも別宮さんがあれだけやってもこんな状態ということは、、、

トライアリストが考える安全基準
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

日本人に日本語を〈第1部〉翻訳者に日本語を日本人に日本語を〈第1部〉翻訳者に日本語を
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訳語選択訓練法

03 13, 2014
 翻訳をするうえで避けて通れない訳語の選択。英語の話はこちらに少し書かれているので、ここでは日本語の話をします。

 課題を添削するときにはまずは原文を見ず、訳された日本語だけを見ていくのですが、不思議なことにかなりざっと読んでいるだけでも、訳語の選択がまずいところは必ず目にとまります。

 論理がおかしかったり(特に接続詞)、ことばとことばの結びつきがおかしかったり。

 ふつうに日本語の文章を読んでいればこういうことに気づく方でも、いざ翻訳となると英語の方に気をとられてしまって、日本語に意識がいかなくなってしまうということはあると思います。

 ではどうすれば、そのような事態を避けることができるでしょうか。残念ながら即効性のある解決法はありません。

 今から紹介する方法はまさに日々の訓練で、大変ですし、時間がかかりますし、90%の人はおそらく端から実践しようとはしないと思いますので、やったもん勝ちです。

 

 やり方は単純です。原文があって、単語でも表現でも使おうとする訳語が頭に浮かんでくるわけですが、そこで一呼吸置いて、その訳語を使って日本語の文章や言い回しをいくつか作ってみます。

 3つ、5つと作っていくうちに、その訳語が日本語のなかでどのような使われ方をしているのかがわかってきます。みなさん日本語を母語としているわけですから、その感覚には自信を持てるはずです(自信を持てないという場合は、、、)。

 もし文章や言い回しを作れないというのであれば、そこが弱点なわけなので、それを意識して日々日本語の文章を読んで蓄積していくしかありません。

 訳語の日本語のなかでの使われ方がわかれば、その訳語をこの場で用いていいものかの判断が下せるはずです。

 たとえばa surrogate end pointというのが出てきて、surrogateを「代理」と訳そうと思った場合に、「代理」と結びつく言葉をたくさん思い出し、「代理」を使って文章を作ってみれば、ここのsurrogateを「代理」と訳せるのかどうか、答えが出るわけです。

 文章を接続することばは特に要注意で、in factが出てくれば機械的に「実際は」とするのではなく、「実際は」を使っていくつか文章を作ってみて、日本語で「実際は」を使える条件(前後の文章がどのような関係にあるのか)を確認する必要があります。



 この作業をひとつひとつの単語、表現についてやっていきます。最初はかなり時間がかかると思いますが、「自分がしんどい、面倒だと思うことに出会ったときに、自分に言い訳をしない。」(「SOHO翻訳者の仕事部屋」)ことが上達への近道です。



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自分の訳文

01 22, 2014
 自分の訳文を見直すときは自然と、「自分がまともな文章を書けるはずがない。どこかにおかしいところがあるはずだ」という前提に立っているようです。

 大学に入る前くらいまではまったく本を読むことがなかったために、これまでに読んだ文章の量が圧倒的に少ない。そのうえ、文章の書き方というのも教わったことがないので、まともな文章など書けるはずがないということです。

 そもそも日本語になっていないところはもちろんですが、論理が破綻しているところがないか、別の意味にとられるところはないかなど、いじわるくいじわるく見ていきます。

 このときに原文はいっさい見ません。基本的に翻訳の読み手が原文を読むことはないですし、余計な情報が入ってきてしまいます。純粋に日本語の世界だけで考える。原文のことはいっさい忘れます。そうすると、原文と訳文を対照して見ているのでは気づかなかった問題が、何かしら浮かび上がってくることがよくあります。


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翻訳の森に迷い込んでもう3年。トライアリスト東京。

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